閃光のように 第8話


ちゃらら~ん
スザクが仲間になった!
ルルーシュは大喜びだ!
C.C.はイラッとしている!
スザクはにやりと笑った!

そんなこんなで今スザクは軍事法廷にいた。
正確にはその控室にいた。
控室にはソファーとテーブル、お茶に茶菓子まで用意されており、見張りの兵が二人扉の前にいる以外特に何かをされる事もなかった。
名誉相手には高待遇すぎる扱いではあったが、特に気にすることなくスザクは紅茶とクッキーを口にしながら先ほどまでの事を整理していた。
はっきり言って、ゼロであるルルーシュに加担した以上あのまま逃げだすこともできたのだが、此処で逃げれば別の名誉ブリタニア人が槍玉にあげられてしまう。
何より自分は無実。
正々堂々と裁判に臨むべきだと主張した。
ルルーシュは渋々といった様子でそれを許し、全部片付いたら会いに来いという言葉だけを残してC.C.と共に姿を消した。
あの時は「うん、必ず会いに行くから」と返事はしたが、良く考えればどこに住んでいるか聞きそびれていた。
どうしよう。どうやって探そう。
まあ、あの場で住所や地図を貰っていても身体検査で見つかってたから、それも見越して教えてくれなかったのかもしれないし。
なら何かしら手を打ってくれるはずだと、楽観的に考えることにした。
となると唯一の問題は、ギアスだ。
ルルーシュはあの日、親衛隊に追われ、殺されかけた。
その時C.C.がルルーシュにギアスという異能を与えたという。
発現した能力は性別転換。
つまり男から女に代わるのだ。
運動に難のあったルルーシュがあれほどの動きをするのだから、そっち系かと思ったのだが、あれは女傑であった母親から受け継いだ遺伝子が云々という理由らしい。はっきり言って理解は出来なかったが、女性になれば強くなる事だけは理解した。
ルルーシュが男だと知った上で好きだったスザクとしては、女にもなると聞いて一粒で二度おいしいって事だよね!男でも女でも関係なく大好きだから、問題なしどころか大歓迎!としか考えなかったのだが、それだけでは済まない事に冷静になってから気がついた。 それはつまり。

「女の子って事は・・・子供、産めるのかな?」

その辺もしっかり作り替わるの?
そう、ルルーシュが女になるという事は、男同士だからと諦めていたルルーシュの子供を見る事が出来るかもしれないのだ。
当然自分との子供を!
という、テロとかブリタニア崩壊とかいう殺伐とした事は全て仕舞い込み、今後のルルーシュとのバラ色の生活ばかりを考えていた。

「あーもー幸せすぎて死んじゃうかも」

一人にやにやとだらしない笑顔で笑いながら頭の上に花を飛ばしているスザクを、見張りの兵士は冷や汗を流しながらみていた。
大丈夫かこのイレブン。
さっきから真剣な表情になったりにやにやしたり・・・気持ち悪いぞ。
頭を強く打ったんじゃないだろうか。
いや、あのゼロとかいう男に麻薬でも・・・。
ひそひそとそんな話がされていたなど、お花畑に居るスザクは気づく事は無かった。
そんなこんなで2時間ほど経過した後、スザクはあっさりと釈放された。
私服に着替え、何でだろうと首をかしげながら裁判所内の通を歩いていると、親切な傍聴人が教えてくれた。

どうやら今回の裁判に関してクロヴィス総督は何も聞かされてなかったらしく、スザクを控室に拘束?したまま開廷された法廷に颯爽と現れたのだという。

「これは一体どういう事かね?聞けばあの虐殺の主犯として枢木スザク一等兵が処罰されるとか。此処にいる者たちは、どうやら私の目が節穴だと思っているらしい」

クロヴィスの嫌みの籠った言葉に、辺りは静寂に包まれた。

「どうやら我が親衛隊が、枢木の犯行だと決めたようだが・・・」

そこからは、クロヴィスの独壇場だった。
スザクがその時、第二皇子シュナイゼル直属の機関、特別派遣響導技術部の新型KMFに騎乗していたことも、そのKMFの行動データと共に提出された。
その時点で枢木スザクは単独行動で虐殺して歩いたという主張は虚偽とされ、無実が決定。となれば本当の主犯は誰かという話になった。
クロヴィスの殲滅作戦の結果ではあるのだが、それを公表するわけにはいかない。
だから、スザクを犯人とした者たち。つまりあの日ルルーシュを殺害しようとした親衛隊たちに全てをかぶせる流れとなった。
クロヴィスの命令を無視し、多くのイレブンを虐殺したのは親衛隊だという証拠が多数提出される。
親衛隊はこの場にいないため、それに対し反論する事は出来ないし、この場にいる者たちもまた、まさかクロヴィス自らが直属の親衛隊を犯人として告発するなど予想していなかったため、クロヴィスに意見や反論が出来る者はいなかった。

「私が片手間に調べただけでもすぐにこれだけの矛盾が見つかった。だというのにお前たちは碌に調べもせずに、枢木一等兵に罪をかぶせようとした。武器の携帯を許されない一等兵が、どうやってイレブンを銃殺出来たのか、少し考えればおかしいと気付くはずではないかね。私の親衛隊だからという理由で悪事を働き、その罪を全て下位のものに擦り付けることで生まれる冤罪をこの私が許すとでも思ったのかな?お前たちはその罪が真実であるかどうかを見極めて裁く立場にあるというのに、それを怠り無実の人間を犯人に仕立て上げるなど何たる怠慢。無能な者に権力を与え続ける私では無いぞ。今この場で反省し、正しい裁きを下したまえ」

そこまで言われてしまえば結論はもう出ていた。
あっさりと親衛隊の有罪が確定。
無期懲役が言い渡された。
だが、親衛隊も黙ってはいない。
こうなったら洗いざらい吐いてやる、死なばもろとも。
そんなやけっぱちな感情に流され牢やで騒ぐ彼らの前にクロヴィスがやってきた。
それまで騒がしかった拘置所が一転静寂に包まれる。
憎々しげにクロヴィスを睨みつける彼らに、クロヴィスと護衛としてついてきているバトレー、ジェレミアは冷たい視線を向けた。
理由はどうあれ、皇族に対する暴言を今ここで彼らが吐いていたのだ。
忠義に厚い二人は、万死に値するとその冷たい眼差しに怒りも乗せていた。

「なぜ、こうなったか解るかね?」

クロヴィスは静かに口を開いた。

「・・・解りかねます」

元親衛隊隊長が答えた。

「君たちは、あのシンジュクで、私の最愛の者を殺害しようと・・・いや、その前に手籠にしようと追いまわしたそうだね?あの子の護衛から全て聞いている」
「何のお話でしょうか、自分たちに身に覚えは・・・」
「無いというのかね?地下鉄跡地へ続く倉庫でイレブンを虐殺したそうだね?そこで、お前たちは意識を無くしていたのではないかね?」

その言葉に、親衛隊は顔を青ざめた。
その時の事はうろ覚えで、気が付けば全員気を失っていたのだ。
なぜか、ベルトを緩め、チャックを半ば下ろした状態で・・・。
つまりあの時あの場所で、クロヴィスの最愛の人物を、自分たちが襲っていたというのだ。倒れていたのはその人物の護衛に気絶させられたから。
今まで謎であった自分たちの奇行。
その理由を悟り、全員顔を青ざめた。

「私の親衛隊だからと、その処分を私に一任してくれてね。どう処罰するか悩んでいた所に今回の件だ。無実を訴えても構わないよ。その場合、お前たちはあの子を襲い、その証拠を消すために殺害しようとしていた事を、私も公表させてもらおう」

どちらの罪が望みだ?

イレブン虐殺の主犯。

皇族、それも主人であるクロヴィスの寵愛を受けた人物を追いまわしての
強姦殺人未遂。

選ぶまでもない。
親衛隊たちは全員口を閉ざすしかなかった。

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